メーカーチューンドの市販車“クリオV6”です。
ご存知の方も多いでしょう、コンパクトハッチバックのリアシートを取り外し、そこに3リッターのV6エンジンと駆動系を載せてしまったという過激な車両です。
そのスタイリングやレイアウトからサンク・ターボの再来と言われているもののラリーへの出場を目的としたそれとは生い立ちが異なり、ワンメイクレース車両としてデビューしていたクリオV6トロフィーのロードカーとして作られました。
そう考えるとサンクのように必要な理由もなくこのエンスー車を作ってしまったルノーには、“ありがとう!”という感謝の言葉を贈りたいものですね。
しかし、もともとフロントエンジン&フロント駆動のクリオですから簡単に載せられるはずもなく、モノコックボディ後半を切り落として下部にサブフレームを取り付けています。
パワーや負担の増大にともない、モノコックボディ前半には補強の鉄骨が追加されているとのこと。
オーナー様は懇意にされているヨーロッパ車専門店から購入されました。
お店の方から履歴が分かっていて整備済みの状態という良い車の入庫を知らされ、実際に試乗してみると大変面白く、購入を決められたそうです。
ヨーロッパ車をメインに何十台もの車を乗られてきたオーナー様に乗り味などを伺うと、「どちらかといえばコーナリングが素晴らしい」とのこと。
高速道路でピタリと安定し、張り付くようにコーナーを曲がっていく足はフェラーリやポルシェの上を行っているのではないかと言うのがこの車の印象ということです。
◆◆外装◆◆
なんといっても大迫力のボディが目立ちます。
低められた車体に思い切りよく張り出したフェンダー、ボディサイドには吸気や冷却のために大口が開けられています。
斜め上方からのアングルで眺めると、その迫力は最大に感じられるでしょう。
また、真横からのスタイリングは前後のオーバーハングが全く無く、さらにショートホイールベースと相まってチョロQのように可愛らしく見えます。
目立つ傷や凹みは無く、フロントバンパーなどへの飛び石傷も目立つほどではありません。
外装のダメージと言えば僅かに見られるホイールのガリ傷ぐらいでしょう。
◆◆内装◆◆
極厚のサイドステップがスーパーカーのようです。
車内前部の造り込みは大衆車的というか、クリオのスポーツグレードと大差ないように感じられますが、後部に目を向ければまるで箱のような物がドカンと収まっています。
乗員スペースとエンジンルームに仕切りは無く、エンジンとその他の物を覆うように箱が被せられているという印象です。
仕切りがないため音や熱の心配をしましたが、オーナー様のお話では全く気にならないそうです。
ドアの取っ手部分など一部に劣化が見られましたが、カーペットやシートは綺麗な状態です。
ハンドルは赤色の物に交換されており、オリジナルはありません。
荷物の置き場所はフロントボンネット内に少しと、リアハッチとエンジンルームの間にも少し空間が設けられていますが、積み下ろしの手間を考えると前席の後ろにあるネットに挟むかエンジンボックスの左右に乗せるスペースで足りるそうです。
◆◆機関◆◆
過激なスタイリングやレイアウトからは想像できませんが、意外と頑丈という機関系。
購入前点検時にタイミングベルトやプラグは交換済みで、その後まだ7000km強ですからその辺りの心配はないでしょう。
現在も好調で、トラブルは無いそうです。
◆◆同乗走行◆◆
オーナー様のご厚意により、助手席での同乗走行をさせていただきました。
駐車場からの出し入れ時に低い車体が段差に擦るかと思いましたが、ホイールベースが短いため難なくクリアして気苦労に終わりました。
ただし小回りが利かず、小さな曲がり角や駐車場では進入アングルに慣れが必要でしょう。
では、その過激な走りは!?と思いきや、街乗りの速度域では乗り心地が良く乗用車の様で、低回転から力強いエンジンの助けもあって市街地が走りやすそうです。
幹線道路に出てスピードを流れに合わせますが、低速域で柔らかい印象の足だったにもかかわらず中速域ではしっとりと路面を捉えて張り付く印象です。
なるほど、この足回りならワインディングが安心して楽しめるというのも頷けます。
また、乗員へのエンジンの存在感は程良い演出程度に抑えられ、メカニカルノイズが気持ち良く聞こえてきます。
エンジンからの熱気を感じるほどではありませんし、エアコンもしっかりと利いていました。
◆◆取材を終えて◆◆
大人のおもちゃですね、この車。
見ているだけでも楽しく、乗ればさらに楽しい、そして何より多くの方に購入可能な価格で販売されたことが素晴らしいです。
今後はますますこの様な車は作れなくなるでしょうから、今が楽しむチャンスでしょう。
なお、リサイクル券\13,970の全額負担と、自動車税\51,000の月割り負担をお願いいたします。
また、現在も使用されているため、走行距離が若干伸びることがあります。
保管場所 東京都