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斉藤円華の「横入り自動車ライター血風録」・第29回
 
シリーズ「エンスーのガレージを訪ねて」 〜その5・今井アレクサンドルさんの場合
 
 
 好評のシリーズ企画「エンスーのガレージを訪ねて」。今回のご登場は、ロールス・ロイスとベントレーを何と36台も!乗り継いだという、画家の今井アレクサンドルさん。
  ロールス・ロイス(とベントレー)を一途に愛するカーライフとは一体・・・? 横浜市内某所のガレージを訪問した。
 
−でかい!長い!−
  指定された待ち合わせ場所に到着すると、白の巨大なRRの隣に人影が。
 この人が、今井アレクサンドルさんです。
  「今日はようこそ! 今日は僕のコレクションを見ていってください」
 今井さんは知る人ぞ知る現代画家・写真家。車のあいだに立つポージングが、既にアートだ!




 72年式ロールス・ロイス ファンタムVI。この面構え、まさに「走るパルテノン神殿」。
  ちょっと暗くてごめんなさい。長大なホイールベース。   ボンネットとトランクを開きました。
 前半分。でかい。ほんとにでかい。
 いかついフロントとは違う、やさしげなリアフェイス。   逆アングルから。
  風格のエンブレム。





  暗がりに妖しげに輝く「スピリッツ・オブ・エクスタシー」。
  車内も拝見。ドアトリムにふんだんに使われたウッドと、分厚い革。
  コクピットはこんな感じ。大径&細い握りのハンドルはRRのお約束。
  ダッシュボードはウッドの一枚パネル。
  パンと張った革シート。クルマというよりは馬車だよね、これは。
  ボンネットはこう開く。この時エンジンがアイドリング中だったが、思いのほか静か。
  広大なリアシート。   300万円かけて作ったミンクのシートカバー。
  足元のパネルを開くとバーカウンターが開きます。

 今井さんはこのクルマで函館や神戸までドライブに行ったそうです。「運転手の腕が良くて、100キロなんて当たり前に出せたなあ(笑)」。道中はミンクのシートに身を沈めて、お酒を片手に美女をはべらせていたのだろうか・・・、と勝手に妄想(笑)。ゴージャス過ぎます。
  車台番号のプレートも品格があります。  クロームメッキが輝くリアゲート部。
 RRと今井さん。
  もう1台はメルセデス500SELリムジン。長さはRRと同じくらいだ。
  対面リアシート。ほとんど居間ですな。   反対側から。
 
 
−クルマのほうからやってくる−
 
 それにしても今井さん、なぜRRばかり乗り継いでいるのか。そこまで惹きつける魅力とは何なのか。喫茶店に場所を移して話をきいた。
 「RRは自分の愛馬。ローマ時代の戦車のようなもんだね」
 ここでいう戦車とは、タイガーV戦車とかではなくてローマの戦士が使用した2頭立ての馬車のことだ。たしかにさっき見たRRの車内は、クルマというよりは馬車の雰囲気である。
 「RRをけなされたらものすごく怒りますね(笑)。家族が去ってもRRだけは残りますよ」
 いやはや大変な溺愛ぶりだ。
 「RRの何が魅力って、それはまぶしい美ですよ、美。でも困ったことにね、どのRRも来てすぐはまぶしかったんだけど、いつも見てると当たり前になっちゃって、今はフツウにしか感じないのよ(笑)」
 そんなものなのか。今井さんはともかくそうやってRRとベントレーを乗り継いできた。
 「『とどまらぬ慾、足ることを知らず』だね。次から次へと欲しくなっちゃう」
 汲めども尽きぬRRへの愛。愛するクルマへの、この一途な姿勢は同じエンスーとして見習うべきだろう・・・、しかしそんなに乗り継いでばかりでは、お金がいくらあっても足りないのでは?
 「ううん、絵と交換だから」
 ――ハア?
 「僕の絵を好きな人が『クルマと引き換えに下さい』って持ってくるの。さっき見たRRとベンツもそう」
 今井さんは個展を開きに海外を飛び回る、売れっ子の抽象画家。父は著名な画家の故・今井俊満氏。プレイボーイで鳴らした父が、オーストリア人の超美人バレリーナの母とのあいだにもうけた一粒種が、今井さんだ。
 そんな今井さんの作品を求めて、コレクターが代金がわりのRRを持参して今井さんのもとを訪れる、というわけなのである。
 アトリエもみせてもらった。こんな感じの絵がたくさん。

 「僕はRRがものすごく好きでしょ。その念がすごく強いとさ、クルマの方からやってくるんだよね。人がクルマを選ぶんじゃない。クルマが人を選ぶんだよ」
 そんなものなのか。何とも含蓄のあるお言葉だ。
 最後に今井さんに、RRを乗り継いで培った「外車とうまく付き合うコツ」について伺った。
 1、 パーツは外国のショップから個人輸入。自分で直せる所は自分で直す
 2、 シートや内装の皮革の傷みはコーンズの「ハイドフード」でケア
 3、 たくさんのクルマと付き合う。修理に出すときは合い見積もりをとれ
 欲しい車があっても価格が手に届かないとお嘆きの諸兄姉、まずは「何が何でもあのクルマが欲し〜い!!」と強く念じるところから始めてみてはいかがだろうか。憧れのクルマを手に入れた時をイメージしてみるのだ。今井さんのRRへの愛、そうそれはスポーツ選手におけるイメトレ(イメージトレーニング)そのもの。念ずれば、叶う、かも?!
 今井アレクサンドル 
  1959年生まれ。現代画家&写真家。1980年代から2000年前半にライブペインティング、商業空間のディスプレイなど、大型アートイベントをたて続けに開催。油彩画を主に描くほか、写真集『ブースカのさんぽ物語』他を出版。受賞歴多数。
 

[執筆者プロフィール]
斉藤 円華(さいとう・まどか)…横入り自動車ライター。圏央道・高尾山トンネル工事に天狗様が大激怒?!→ここからチェック!
※ブログ “mdk-on-line” http://mdk-on-line.jugem.jp/
※ mixi(ミクシィ)にもプロフィールがあります。

【次回予告】
 前号で予告していた「ソレイユ! 旧車イベントは春を先取り」を掲載予定。もうしばらくお待ちを!

 

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