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斉藤円華の「週末自動車ライター事始め」・第16回
 
JCCAニューイヤーミーティング2007 お台場でエンスートレンドを定点観測!
 
 
   新春恒例のクラシックカーイベント、「JCCAニューイヤーミーティング」。2007年の今年も多くの参加車両とギャラリーでにぎわった。その模様をレポートする。
 
 
−エンスー解放区−
 
 さわやかな陽気に恵まれた当日(1月28日)。昨年は何を思ったか自転車でかけつけたが、今回は普通にクルマでお台場へ。すると会場周辺にはエンスーな車がひしめいているではないか。この日ばかりはお台場全体が「エンスー解放区」と化すのだ。
 でさっそく目にとまったのが、極上の67年式ランボルギーニ・ミウラP400。素晴らしいコンディション。そして、この溜息の出るプロポーション!
 うねるような、流れるような造形。おもわず溜息が出る。
 私も実物は初めて見た。これでドライブしたら痺れるなあ・・・。
 オーナーのN氏によれば、「エンジン以外は全部ダメ」だったそうで、レストアに1500万かかったとか。それでもまだ完成度は9割だという。ちなみに購入価格は3000万だそうな。
 すぐ後ろに停まっていた73年式ディーノ。こちらもすばらしい仕上がり。
 オーナーI氏いわく「今日はみんなミウラに注目しているなあ」。
 車両パレードを先導するジネッタG4。
 キャディラック。重厚なグリルと、流線型蒸気機関車を思わせる巨大なボンネット。
 
 
−今年のテーマは三菱車−
 
 今回のコンクールのテーマは「三菱車」。試練の時期をへて、軽自動車「i(アイ)」が販売好調など、このところ元気を取り戻しつつある三菱だが、この日は入念にレストアされた車両が多数展示。熱烈なオーナーの存在を印象づけた。
 70年式ギャランAGS。ラリー仕様が精悍だ。
 68年式コルト1500スーパースポーツ。ステッカーが誇らしげ。
 もちろん、他の出展車両もすばらしいものばかりだ。

 67年式アルファ2600SZ。ザガートの造形はグラマラスで何ともいえない妖艶さがある。オーナーのT氏によれば「これじゃないと嫌」とか。
 62年式アルファ・ジュリエッタSZ2。名作ジュリエッタが、ザガートのボディを纏ったらこうなった。オーナーのS氏が「維持には大変苦労してるよ」と話すと隣でT氏が「うんうん、そうだよね」。たとえ手がかかっても乗り続けたい、そう思わせるだけの魅力がザガートにはあるようだ。
 3輪トラックに嬉々としてまたがる、この人は・・・?
 山梨で鮨店を営む滝本浩久さん。「元のオーナーの所に通い詰めて、去年の10月に入手しました。クリスマス前にレストアが終わって、今日が初お披露目です」
 このダイハツ・SKC7、昨日納屋から引っ張り出してきたようなヤレ感がたまらない。よく見ると幌がぱっくり裂けている。このままの状態をどうか維持してほしい、というのは勝手な希望か。
 うわー、懐かしい! 73年式トヨタ・ダイナ。プラスチックのホイールキャップとステーキベッド(荷台の木製の柵をこう呼ぶ)がいい感じです。何よりこのボディカラーが「昭和」しています。
 ホンダのツインカム50、CR110。何キロ出るのか。
 ガレージセールはご覧の通り、よりどりみどりだ。
 ミーティングの佳境は恒例のコンクール表彰式。入念に整備された三菱車の中から各賞が選ばれた。
 表彰台に並ぶ受賞者の皆さん。
 最優秀賞(コンクール・ド・エレガンス)には68年式デボネアが選ばれた。オーナーの深尾淳さん。
 ブレッツナーによる特徴的なデザイン。直線基調にたくみに曲線を織り交ぜる。オヤジカーと呼ばれて久しいが、なかなかどうして端正な美しさを放つ。
 当日の会場には各クラブもブースを設けて出展。117オーナーの私としては、117オーナーズクラブはやはり外せない。手前からハンドメイド、量産丸目、量産角目。
 クラブ員の皆さん。「20代から70代まで幅広く参加してますよ」とは事務局の下川守さん(手前左の方)。
 
 
−和製ウニモグ−
 
 当日の三菱車、いや参加車両の中でもひときわ異彩を放っていたのが、これ。以前に雑誌「オールド・タイマー」87号でも紹介された、66年式三菱2W400だ。主に官公庁向けの作業車として製造されたものだという。スノープラウや除雪ロータリーなどのアタッチメント(作業具)を前面に取り付けて、往時は活躍したことだろう。
 後ろから見る。車両の払い下げを受けた「レストイン平」はもうないが、関係者の了承を得てロゴを残してある。イイ味出してます。
 キャビンの中はこんな感じ。エンジンカバーが手前に大きくせり出している。広くはなさそうだ。左ハンドルなのは、道路作業時の取り回しを考慮したためだとか。
 100キロまで刻んであるスピードメーター。そんなに出るものなのか。オーナーの池原智彦さんによれば「マスターバック(ブレーキ倍力装置)がないので、ブレーキが凄く重い。50キロまで出せますが、実用としては40キロ以上は出す気になれません」。
 池原さん。本当はウニモグが欲しかったというが、「ネットでたまたま発見したので買いました」。書類なしの程度のよい個体と、書類はあるがボディの腐った個体をニコイチして出来た。
 異母兄弟、涙の再会(笑)。和製ウニモグと本家ウニモグの揃い踏み。設計モチーフが共通しているのは一目瞭然である。
 ギャラリーは釘付け。大人気だ。  嬉々としてカメラを向ける大人たち。
 
 それにしても、クラシックカーとしては明らかに傍流の作業車にこれほどまでに人気が集まるのは、どうしたわけだろうか。たとえば子供は「働くクルマ」が大好きだが、そうした機械が持つメカメカしさや機能美を、大人もカッコイイものとして再発見したということか。「エンスーの杜」でも今後、特殊車両の出物が増えるかもしれない?!
 そして今ひとつのトレンドは、オート3輪などが濃厚に放つ「古きよき昭和」のテイストだ。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」が大ヒットしたが、主に団塊の世代が幼少期を過ごした昭和30年代の記憶は、ひとに強烈なノスタルジーを引き起こすもののようだ。大量に退職した団塊世代は、これから時間とカネを使って往時のクルマのレストアに励むに違いない。
 いずれにせよ、クラシックカー趣味の世界は年々裾野を拡げている。これから更にどこへ向かうのか、目が離せない。
 
 

[執筆者プロフィール]
斉藤 円華(さいとう・まどか)…週末自動車ライター。沖縄の元気を伝える亜熱帯マガジン「うるま」最新号(4月号)に、渡嘉敷島マラソン参加記事を書きました。書店で見かけたらぜひ手にとって見てみてください。(あ、あと買ってもらえると嬉しいです!)
※ブログ “mdk-on-line” http://mdk-on-line.jugem.jp/
※ mixi(ミクシィ)にもプロフィールがあります。どうぞご覧下さい。

【次回予告】
 やっぱりエンスー車は走らせてナンボ。次回、春を探してドライブ記事に挑戦! お楽しみに。