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斉藤円華の「週末自動車ライター事始め」・第14回
 
サーキットの向こうに未来が見える −日本EVフェスティバル2006に潜入!−
 
   ガソリン価格が高騰する昨今、ハイブリッドカーや燃料電池車、バイオ燃料など、次世代の自動車技術が注目されている。今回は、連載第7回でインタビューした自動車評論家・舘内端氏が代表を務める日本EVクラブが主催する、電気自動車の祭典・「日本EVフェスティバル2006」を取材した。
 
 
−耐久レース−
 
 メインイベントは「コンバートEV1時間ディスタンスチャレンジ」。コンバートEVとは、既存のエンジン車を電気自動車に改造したもの。見た目にはフツウの車だが、決定的に違うのはエンジン音がしないのと、排気ガスが出ないことだ。
 
 ビートやハチロクもこの通り。
 
 
 スタートは変則ルマン式。舘内端氏が日の丸を振る中、各車一斉にスタート。しかし中にはトラブルですぐに走り出せないチームも。
 このレースはルールが変わっている。全車がメインスタンド前で周回ごとに停車して周回数をチェックされる。また途中で「地球温暖化クイズ」を渡され、正解すると周回数ボーナスがもらえるなど、単に速さや性能だけを価値としていないのが特色だ。
   連載第10回で取材した「東京ノスタルジックカーショー」でインタビューした、日本自動車大学校チームもカローラEVで出走。
   マイティボーイ。
 印象的なのは、EVもなかなか速い!ということ。メインスタンド前は平和だが、途中の直線コースやカーブではEV同士が真剣にバトルしているのだ。電気自動車というと環境に優しいというイメージばかりが先行するが、実際にはこうしてモータースポーツとしてもきちんと成立するのである。  
   それにしても、エンジン音やガソリン、オイルの匂いが一切しないサーキットというのも何だか変わっている。他の参加者も「このイベントはとにかく平和だねぇ・・・」と呟いていたが、訪れた人にカルチャーショックを与える、常識の枠を揺さぶる面白さがこのイベントにはある。





  舘内さんのチェッカーフラッグを受けてゴール。
 
−目の前にある未来−
 
 耐久レースの後は燃料電池車やEVバイクなどによるデモ走行展示だ。
 トヨタと日野が共同開発した燃料電池バスに試乗した。期待して乗ったが、ヒューンという音がして滑らかに加速していく他は、普通のバスとそんなに変わらない。やや拍子抜けしたが、毎日の市民の足として活躍するには違和感を残しては落第、ということなのだろう。
 違和感、と言うと語弊があるが、電気自動車らしさを感じたのは三菱が展示していたランサーエボリューションMiEVだ。車輪ごとにインホイールモーター(車輪の内側にモーターが仕込まれている)が与えられるこの車、同乗試乗させてもらったのだが、クルマというよりは電車に乗っているような感覚。モーター音が絶えず車内に響き、開発途上感がいやが上にも高まる。けれどもエンスー的に面白いのは、断然こっちだ。
 ジムニーEVによるデモンストレーション。
 
参加者に話をきいてみた。
 シトロエン2CVをコンバートした「2EV」で参加したのは、日本EVクラブ松本支部の横内照治さん。雑誌「NAVI」でも紹介された2EV、今回はアートなペインティングを施しての登場だ。
 さすがに当日は積載車でやって来たが、「普段は近所の移動に使っている」とか。横内さんは地元の長野で温暖化防止活動にも取り組んでいる。
   
 見る者の度肝を抜く、ビッグバイクEV。自動車・バイクのフリーペーパー「AHEAD」の企画で製作された。ベース車両はヤマハXJR1300だが、EV化されたので「XJR1300e」。両脇のサイドバッグにバッテリーを積む。
 作業を手がけたバイクショップ「神戸ユニコーン横浜」の池田隆さんは語る。「こういうバイクがあったらなあ、というのを現実に形にしてみました。実際に走らせて、見てもらって、未来を感じてもらえれば嬉しいですね」
 実際に走るのは当日が初めてとのことだが、27kg・mという、スカイラインGTR並みのトルクが生み出す走りとは一体どんなものなのだろうか。剥き出しのチェーンドライブが暴力的な走りを予感させる?!
   
 ホンダはかっこいい電動シニアカーを出展。エンスー心をくすぐるデザイン、これなら乗っても恥ずかしくない? 開発スタッフの市川さんに寄ればターゲットは「アクティブシニア」だそう。
 左から開発スタッフの山岸さん、市川さん。
   
 耐久レースに参加した千葉県自動車大学校チーム。「先生のクルマを譲ってもらい、コンバートしました」。200kgのバッテリーを積み、航続距離は4〜50km。
   

 イベント終盤、フォーミュラEVによるタイム計測があった。日本EVクラブ製作の「X−01」は過去に筑波で1分06秒928の最速ラップを記録しており、当日は記録更新なるかと私も固唾を呑んで見守った。


 残念ながら更新はならなかったが、それでもEVがもつポテンシャルの高さを感じるには十分だった。「シュウン!」というモーター音を残してあくまで静かにかっ飛んでいくフォーミュラEVに、未来を見る思いがした。
 
 

[執筆者プロフィール]
斉藤 円華(さいとう・まどか)…週末自動車ライター。連載も気がつけば早一年。あっという間のような気もしますが、「継続は力なり」という言葉を実感いたします。日々精進。
※ブログ “mdk-on-line” http://mdk-on-line.jugem.jp/
※ mixi(ミクシィ)にもプロフィールがあります。どうぞご覧下さい。

【次回予告】
 12月は各地のイベントもお休み。そこで次回は、昨年の今頃行ったわが117クーペの鈑金塗装のその後をご報告いたします。お楽しみに!