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斉藤円華の「週末自動車ライター事始め」・第12回
 
シリーズ「エンスーのガレージを訪ねて」  〜その1・新津光洋さんの場合〜
 
   エンスーな人は、どんなガレージライフを送っているのか?
 雑誌でガレージが紹介されていたりするけれど、実際に自分の目で観察したことってないよなあ。第一私の駐車場、ガレージじゃないし。憧れるけれど、例えば費用はどのくらいだろう。
 そのへんの実際を知りたくて、ガレージを訪ねてみることにした。
 
−もとは農業倉庫−
 
 東北自動車道久喜インターに程近い、埼玉県内某所。ここに、連載10号でもインタビューした新津光洋さん(58)のガレージがある。

 大きな建物。ガレージというよりは倉庫である。

 新津光洋さん。「そうなんです。もとは農業倉庫として使われていたものを借りて、ガレージとして使っています」
 中に入ると、さすが倉庫だけあって天井が高い。「天井が低いガレージだと結露が落ちてくることがありますが、ここはそれがなくて助かります」
 約30坪(11×9m)の建屋の中に、車とバイクがぴっちりと収まっている。のだけれど、ところで新津さん、一体何台車をお持ちなんですか?
 「ナンバーが付いているのだけで9台、未登録も入れるともっとあります」
 いやはやである。毎年の自動車税だけで優に40万円近い出費だ。しかし本人は「まあ、趣味ですから…」と淡々としている。

 
−クルマの楽しみ、プライスレス−
 
 早速コレクションを見せてもらう。トヨタ・パブリカ。
 66年式の初代カローラ。シングルナンバーに注目。「登録を切っちゃうと再登録の時にナンバーが変わってしまうんですよ。ですのでナンバーは切らさないようにしています」
 整備性のよいエンジン周り。「オーナーが自分でメンテナンスすることを考慮した作りです」  トヨタはカローラを生産するために工場を新設(高岡工場)。この刻印から、量産開始時の最初のロットであることがわかるという(新津さん談)。
 ボディと同色のインパネがお洒落です。
 初めてのマイカーはスバル360だったという新津さん。その後410ブルーバード、スバルff−1スポーツ、レオーネ、カローラと乗り継ぐ。「トヨタは信頼性があります。日産サニーは運動性が高いですね」
 ちなみに新津さんは自動車用ワイパーを製造する会社に勤務。「ワイパーを動かしたら、一度上に持ち上げてあげるとゴムが長持ちするんですよ」と豆知識を披露してくれた。
 スバルR2。近所の方から譲ってもらった、ワンオーナー車。「前のオーナーは永年乗っておられて、お別れのときにお神酒をかけていました。奥さんは寂しそうで、さぞ愛着があったんでしょうね」。元オーナーには年に一度会いに行くという。
 
 コンパクトなパッケージング。小さいというか、カワイイ。
 リアエンジンならではの前トランク。容量は推して知るべし。
 2台並べてもらった。何だかおいしそうな色ですね。というより、思わず某クレジットカードを連想してしまいます。クルマに詰まった思い出、プライスレス。
 新津コレクション・外車篇。「914」ナンバーのポルシェ914と、オースチン・ヒーレーMKII。
 小さくても、この風格。さすがは英国車です。
 コクピットもまた、味わいがあります。
 


 角度を変えてみると、意外とダイナミックなプロポーション。新津さんのコレクションは、押しなべて塗装が美しいです。
 ガレージっぽい画像を一点。過去に参加した旧車イベントのエントリータグ。
新津さんはバイクも収集している。
 メグロSG。250cc、18馬力。メグロがカワサキに吸収された直後の、メグロとしての最後のモデル。
 ホンダXL250。リアのスプロケットギアの大きさが目を引く。中低速で乗りやすいとのこと。
 トヨタ・コロナ。アルミホイールはノン・オリジナルだが、いかにも旧車という雰囲気に仕上がっています。スラント・ノーズ、かっこいいですね。
 逆アリゲーター式ボンネット。
 
 この車、2速オートマ、いわゆる「トヨグライド」仕様だ。
 ハンドルコラム上にあるシフトレバーとセレクター。ライトをつけるとセレクターが内側から発光するという。このデザインがいかにも昭和テイストで、たまりません。
 試乗してみませんか、ということになり、早速同乗させてもらった。「トヨグライドのシフトパターンは、R(後進)の隣にすぐL(低速)がきているでしょう。これがミッションを傷めるということで、後に今日の一般的なパターンに改められたそうです」
 私も運転させてもらった。乗り味はいたって普通、足回りは柔らかい印象だ。ブレーキの利きが特徴的で、いきなりガクッとかかる「カックン・ブレーキ」。びっくりしたが、昔のタクシードライバーはむしろこういう味付けを好んだという。
 イカす旧車で、郊外の田園風景の中を流すのはなかなか気持ち良かった。
 取材当日は、ちょうど事故修理中だったサニーが一年半ぶりに新津さんの下に戻ってくる日。フルレストアに近い作業を施されたサニーは、新車と見まがうばかりの仕上がり。工場のスタッフの話を聞きながら、満足そうに車を眺める新津さん。
 最後に気になるお値段の話を。「ここの賃料は月5万円です。不動産屋が友達なので安くしてもらいました」
 ――安いですね!
 「この辺は駐車場も1台分で3千円ですからね。東京23区内と比較すれば十分の一です」
 なるほど。単純に比較は出来ないが、都内で同じような倉庫をもし借りるとすれば月50万円はする勘定になる。都内で生活する人間にとっては夢のような環境だ。
 だが、費用がいくらということも大事ではあるけれど、とにかく車やバイクが大好き、という気持ちこそがガレージライフを楽しむ上では欠かせないだろう。取材の最後、新津さんが「所有するだけではなくて、それらをどう使って遊ぶかが大事なんです」と語っていたのが心に残った。
 

[執筆者プロフィール]
斉藤 円華(さいとう・まどか)…週末自動車ライター。先月、雑誌の取材を兼ねて沖縄に行ってきました。太陽が強烈ですが、日陰では風が涼しい。ゆったりと流れる沖縄時間に浸ってきました。
※ブログ “mdk-on-line” http://mdk-on-line.jugem.jp/
※ mixi(ミクシィ)にもプロフィールがあります。どうぞご覧下さい。

【次回予告】
シリーズ「エンスーのガレージを訪ねて」、次回も続きます。ガレージライフは奥が深い?! 乞うご期待。