エンスーの杜    トップページへ   エンスーなニュースに戻る  
 
 
斉藤円華の「週末自動車ライター事始め」・第5回
 
「JCCAニューイヤーミーティング 
     −お台場に旧車集結! 今年の合言葉は『スロー・カー・ライフ!』−」
 
 
 旧車フリークには恒例の年中行事として定着した感のある? JCCA(日本クラシックカー協会)主催のニューイヤーミーティング。1月28日に開催されたこのイベントの模様をお伝えしたい。
 1月最後の日曜である当日は、数日来続いた寒波も和らいで陽気に春の息吹が感じられる。私は都内の自宅から、渋滞を嫌って会場のお台場臨時駐車場まで自転車(ロードバイク)で行ったのだが、途中でアクシデント発生! レインボーブリッジを通ろうとしたのだが、何と自転車は通行禁止なのだ。何だよ不親切だなあと憤っても、どうしようもない。事前リサーチが足りなかった。
 築地から迂回することも考えたが、いささか億劫だ。どうするか思いあぐねているうちに、すぐ近くに水上バス乗り場を発見。「これだ!」お台場までの運賃460円。なお自転車は別途手荷物料金が必要だ。
 
 日の出桟橋・水上バス乗り場にて。抜けるような晴天が気持ちよい。
 20分足らずの乗船時間だが、都内に住んでいながら水上バスを利用したことがなかった私にとって、これは新鮮な体験だ。思いがけず旅気分を味わう。
レインボーブリッジを背に愛を囁くふたり。いいですね。
 
−昭和にワープだ−
 会場の広大な敷地に国内外の旧車がひしめき、ここだけ時間が逆戻りしたかのような錯覚に襲われる。そんな中、最初に注目したのは日野コンテッサ。中でも「900」と呼ばれるセダンはほとんど滅多に見ることがない。
 
 日野コンテッサ。左がコンテッサ900、右は1300クーペ。
 オーナーは「コンテッサクラブ」会員のFさん。購入2年目、レストアが完了したのは昨年11月。
 エンジンルームもぴかぴか。これだけの希少車、維持に当たっては「会員同士の情報交換は欠かせない」そうだ。
 遊園地から飛び出したような、かわいい(失礼!)アメ車を発見。
シンプルだが、ボディ同色のお洒落なインパネ。
 オーナーの桑沢さん。「これは55年型ナッシュ・メトロポリタンです。他にも車を持ってますが、これは普段のアシとして乗っています。こう見えて燃費がいいし、小さいのでどこへでも入っていけるのがいいですね」。ちなみに排気量は1500cc(オリジナルは1200cc)。
 
 国産旧車ではハコスカやZ、TE27、ベレットなどの「王道系」旧車とは別に、クラウンやプリンス・グロリアといった「オヤジ系」旧車が独自の存在感を示す。バンパーやグリル、ヘッドライト周りやドアモールに多用されたメッキパーツが重厚に輝き、当時ならダサかったであろうセダンボディも今見ると昭和テイストにあふれていてカッコいい。
 
クラウン艦隊、出現!
 そんな中、これまた懐かしい79年型トヨタ・タウンエースワゴンを発見! オーナーの小林さんは新車で購入して以来ずっと乗り続けている。
車内の状態もよい。
 初めは普通に乗っていた小林さん。長く乗り続けているうちに、「世の中からこういう地味なクルマが消えていく。乗り続ければ希少価値が出てくる」と思うようになったそうだ。専ら週末専用で走行距離は7万7千キロと少ない。ガレージ保管も良好な維持に貢献している。


ワンオーナーのタウンエースワゴンと小林さん親子。
「王道系」旧車ももちろん人気。
 ケンメリ・スカイラインのバン・警察仕様(?)。往年の刑事ドラマを連想します。
 このスタイリング、何だかフランスの大衆車のようではありませんか? 69年型ダイハツ・フェローに乗るのは布施さんだ。

 「乗り比べると、当時のマツダ・キャロルは車内にフロントのホイールハウジングが張り出していますが、このクルマはそれがない分広く感じます。乗車姿勢に無理がありません」。助手席に座らせてもらう。私も以前キャロルの座席に座ったことがあるが、それよりかは自然な印象だ。
車内。至ってシンプルだ。ペダル配置はごく真っ当な感じ。
当時の仕様のタイヤ。探しに探したという。

 「フェロー、というと皆さんフェローMAXを連想されますが、あれはFFですが初代のこちらはFRなんですよ。残念ながら世間では一緒くたにされていますね」と布施さん。
布施さんとフェロー。
 あちこちで見られた青空市。「昭和にワープ」感がいやが上にも上昇。
当時のままのコカ・コーラ。まだ飲めるのか?
 映画『爆発!暴走族』のポスターを発見。岩城洸一も出演。
 
−成熟する旧車文化−
 参加車両の中から、オリジナルを保ちかつコンディションの良い車を表彰する「コンクール・ド・エレガンス」の最優秀車が選ばれ、篠塚さんが所有する54年型メルツェデス180Dが栄誉に輝いた。
 審査委員長の熊倉重春氏(自動車評論家・元CG編集長)は「24歳の時に新車購入して以来、52年間、75万キロを乗り続けている。ディーゼル規制により乗れるのが今年5月までとなってしまった。車両は決してぴかぴかのミント・コンディションではないが、篠塚さんこそ、本当のクルマとの付き合い方をされて来られたのではないか」と高く評価。篠塚さんは「燃費が良く、環境負荷も低いのに一律な規制で乗れなくなるのは残念」と思いを語った。車両は日本自動車博物館に寄贈されるという。
 
受賞の様子。左が熊倉氏、右が篠塚さんご夫妻。
長年連れ添った愛車とともに。
若草色のドアの内張りが素敵。シートには賞品のワインが。
受賞者による記念撮影。
受賞車両が並ぶ。みな溜息の出るものばかり。
 カーマガジン賞に輝いた67年型911タルガ。まるで新車のよう。
 CG賞のシトロエン・アミ。往年のフランス大衆車はお洒落です。
 受賞車両ではないが、目を引いたのがシトロエン・トラクシオンアヴァン。お台場がパリに見える?!
 
 今回、コンクール最優秀車がいわゆるスペシャルティー・カーではなかったのは象徴的だ。希少車・人気車がクローズアップされるのはこれまでと変わらないが、タウンエースの小林さんやメルツェデスの篠塚さんの様に、長年家族の一員としてクルマを受け入れ、過ごしてきた人々が登場し、注目されるようになったのは旧車人気の成熟の証といっていい。
 1台のクルマを長く乗るということはちょっとやそっとでは真似できない。モデルチェンジにあえてくみしないクルマとの付き合い方は、「モノを大事にする」「モノに愛着を感じる」「ひとつのモノを使い続ける」などの乗り手の価値観がそこに色濃く反映される。現代の大量消費社会にあって、これは文化ですらある。
 ことによっては環境にもやさしい?一台のクルマとの長い付き合い。私はこれをあえて『スロー・カー・ライフ』と呼んでみたい。2006年がスロー・カー・ライフにとって記念すべき年になるのは間違いないだろう?!
 
 

[執筆者プロフィール]
斉藤 円華(さいとう・まどか)…週末自動車ライター。先日裏高尾にツリーハウスを取材。背後に見える中央道を眺めながら、人とクルマ・自然のこれからに思いを馳せてみたりして。
※ブログ “mdk-on-line” http://mdk-on-line.jugem.jp/
※ mixi(ミクシィ)にもプロフィールがあります。どうぞご覧下さい。

【次回予告】
年末からの117クーペの鈑金作業、遂に完結! 涙なくしては読めません。次回「鈑金作業・後編、ああ作業ミス無情」、ハンカチのご用意をお忘れなく!