Ｗ１１６は、メルセデス・ベンツとして初めてSクラスと正式に命名され、１９７２年から１９８０年まで製造・販売されたモデルです。

当時の最新技術により、乗員部分を特に強固にしたうえで事故時の衝撃は前後のボディで吸収するようにしたセーフティセル構造を取り入れ、インテリア面ではパッド付のインパネやドア内張りが採用されるなど、従来から大幅な安全性向上を実現しました。

１９７８年以前のＷ１１６は、欧州の排ガス基準により若干パワーダウンを余儀なくされていたのですが、１９７８年以降は燃料装置の改良によって本来のパワーに戻っています。

今回ご紹介するのは、完成度の高まった最後期モデル(１９８０年)。インジェクション仕様の２８０ＳＥです。

【外装】

奥様のお好みで選ばれたというベージュのボディは新車時からのオリジナルの塗装。淡色系の色ということもありギラギラした光沢ではありませんが、十分に綺麗な状態を保たれています。ただ、画像では確認できませんが、オリジナルの分厚い塗装が劣化してヒビのようなものが入ってきている部分があります。

メッキ類の程度は良く、小さな点錆びなどはありませんが、所々にくすみが見られました。くすみに関しては磨けば綺麗になりそうです。

ボディの凹みや傷などは、微細なものは別としてほとんど無いと言っても良好なコンディションで、はっきり確認できたのは左リアフェンダーのテールランプ上にあるエクボと、左後部リアドアにある小さな点錆くらいです。点錆のほうはタッチアップペイントで十分綺麗になる程度です。（どちらも撮影していますので画像でご確認下さい）。

【内装】

金庫のドアを開けるかのような重厚なドアを開けて車内に入りますと、ブラウン系の暖かな内装が出迎えてくれました。グレーや紺色などの寒色系ではなく、内装がブラウンというのも、このお車の外装色とも合っていると思いますし、少しレトロっぽい暖か味を醸し出しており、いい色だなと思いました。

内装の程度については文句の付けようも無く、年式を考えると驚くような綺麗さです。

聞けば、買われた際には新車時からと思われるようなレースのシートカバーが装着されていたとのこと。シートのヤレを感じさせないのもさすが、この頃のメルセデスです。

ただし、細部を見ていけばウッド部分の表面に小さなヒビが見受けられました。「木目調プラスチック」ではなく、本物の銘木にラッカーを塗って光沢を出していますので、経年劣化は避けられないところだと思いますが、そう気になるほど目立つわけではないと個人的には感じました。

その他、運転席シート付根の樹脂パーツが割れたとのことで、現在は外されています。

いずれにしても、全体的な程度としては上々で、かなり綺麗な状態です。

【機関】
車検が２９年８月で切れており、試乗はできませんでしたが、何か不具合があるわけではなく、問題無く乗られていたとのことでした。

エンジンの始動性は良く、異音無く吹け上がりもスムーズ。

ちなみに、燃料はハイオクでなくレギュラー仕様となるそうで、燃料代を考えると少し嬉しい部分かと思います。

タイヤはブリジストンの１９５/７０Ｒ１４で、山は７〜８分程度はあります。

使用状況としては、普段の足として主に奥様が使用されていたとのことです。

現在把握できている不具合箇所は以下のとおりです。

・クーラー不調

平成２７年８月にレトロフィット（Ｒ１３４ａ）実施済で、普通に使えていたそうですが、昨年はガスを補充して使われていたとのことです。今年はガスを補充しておらず、現在は冷気が出ておりません。

スイッチのＤＥＦでは風が出ますが、ＡＵＴＯ-ＨＩ、ＬＯでは風が出ていません。この部分は要修理です。

・アンテナ伸縮

ラジオ用のアンテナが完全に収納できず、１５Ｃｍ程残ってしまう状態になります。また、アンテナの伸縮についてはトランク内に設置したスイッチによるものとなります。

その他は、特に不具合はありません。

【整備履歴】

オーナー様は２年前にこのお車を中古車店より車検２年付きで購入され、今回、車検が切れるまでの２年間で約８,５００Ｋｍを走られています。

車検時にも一通りの整備はされ、納車されたのですが、更に購入後に不具合や気になる箇所等を、記録簿があるだけでも８５万円以上かけて整備され、現在は安心して気持ち良く乗れる状態に仕上げられています。

整備記録についてはここに全てを記載すると大変な行数になりますので、記録簿を撮影いたしました。記録簿の画像は「高画質画像」をリンクしますので、そちらでご覧になられて下さい。

【取材担当者からの一言】

コストや効率化ありきではなく、本当にいいものだけを作るという骨太で純粋な思想を実践していた頃のメルセデスです。

「最善か無か」の理念のもとに製造されたこの時代のメルセデスは今のベンツにはない重厚かつ上品なたたずまいがあります。

大きな車ではありますが、外装色、内装色に暖か味があり、柔らかな雰囲気で、奥様がお気に召されたというのもわかるように思います。

オーナー様は、お子様がお生まれになり、まだ乳幼児とのことで、車にばかり愛情をかけてはいられなくなったとの事です。お車も複数所有されていることもあり、これからは車に注いでいた愛情をお子様に、ということで「一台減らそう・・」というのが売却の理由です。

オーナー様曰く、「Ｗ１１６自体がもう稼動状態で残存している個体が少ないですので、比較できるモノが少ないのですが、強いて言えばＷ１２３を探している人にもオススメしたいです。１２３はワゴン中心に人気で高価格ですが、１１６の方が中は広いし、ファミリーユースでも絶対利便性高いです。大事にしてくれる人に引き継ぎたいと思っていますので、外装のサビや凹みなど細かい所は目をつぶって旧車入門でどうでしょう」

とのことでした。

外装、内装の程度も良く、整備もきちんとされており、中古相場と比較しても（エアコン修理代を含めても）お得なお車だと思います。「ヴィンテージ」メルセデスの奥深い世界を知るための入門用としてもお勧めできる一台だと思います。

高画質の写真をたくさん用意させていただきましたので、こちらからご覧下さい。整備記録簿も掲載しています。

https://yahoo.jp/box/RvdWc7
（画像の右下にある「大きいサイズで見る」をクリックすると画像が拡大されます）

実車は福岡県にあります。

個人売買の為、消費税などかかりません。

リサイクル委託料金、自動車税（月割り）がある場合は別途頂戴いたします。

以上の記事内容は、オーナーさんのコメントと取材をもとに作成したもので、わかる欠点なども含めて記事を作成しておりますが、不具合箇所、整備履歴、修復歴などに関して取材時に完全に把握することはできませんし、エンスーの杜で裏づけを取ったものではありません。エンスーの杜より無理に購入を勧めることはございませんので、最終的にはご自身でご確認の上、購入をお決め下さい。